網膜裂孔・網膜円孔・裂孔原性網膜剥離 説明と治療

眼の構造 網膜

 眼球はカメラに例えることができますが、網膜はカメラのフィルムに当たるものです。

  網膜はものを見るための神経の膜です(図1)。網膜に穴が開いた状態を網膜裂孔・網膜円孔といい、網膜剥離は眼球壁から網膜が剥がれている状態のことです(くわしくは網膜の内側9層が10層目の色素上皮細胞層からはがれる)。その網膜のさらにものを見る中心部分を黄斑(おうはん)といいます。

図1.眼球の立体構造

網膜裂孔・網膜円孔・裂孔原性網膜剥離の症状

 網膜裂孔・網膜円孔では

  • 飛蚊症(小さなゴミのようなものが見える症状)
  • 光視症(視界の中に閃光のようなものが見える症状)

網膜剥離になるとさらに

  • 視野欠損〔一部が見えない〕
  • 視力低下
  • 変視症(ものがゆがんで見える)など

 網膜には痛覚がないので、痛みはありません。

網膜裂孔・網膜円孔・裂孔原性網膜剥離の検査

瞳孔を大きくする目薬を点眼し、網膜に穴がないか、剥離しているかどうかを調べ、穴の場所を確認する眼底検査を行います。他にも超音波検査や網膜電図、視野、眼底カメラ、OCTなどを必要に応じて行います。

 

網膜裂孔・円孔・網膜剥離原因と状態

(1)原因
網膜に孔が開く原因として、老化・網膜の萎縮・外傷などがあります。網膜に孔(網膜裂孔・網膜円孔)が開いてしまい、目の中にある水(液化硝子体)がその孔を通って網膜の下に入り込むと網膜剥離になります(図2)。

(2)状態

 網膜裂孔・円孔は網膜剥離に危険性が高い状態、網膜剥離は失明の危険が高い状態といえます。

 網膜裂孔・円孔はレーザーで(網膜光凝固術)孔の周りを癒着させ、網膜の下に水が回り込んで網膜剥離にならないようにする治療が必要です。

 網膜剥離は下に示した手術を早急に行うことが望ましいです(網膜円孔による低在性のものでは一か月程度余裕があることもありますが)。剥がれた網膜は光の刺激を脳に伝えることができません。また、剥がれた網膜には栄養が十分行き渡らなくなるため、徐々に網膜の働きが低下します。たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、視力が1.0でない、ゆがむ、やや暗い、小さく見える、視野が狭いという後遺症が残ることもあります。また、はがれている期間が長いと網膜同士が癒着し、失明に至ります。剥離の期間が長引くほど手術をしても治りづらくなります(増殖硝子体網膜症)。

図2.裂孔原性網膜剥離のイメージ

(3)穴が見つからない網膜剥離・非裂孔原性網膜剥離の治療は別物です
牽引性網膜剥離と滲出性網膜剥離があります。

  • 牽引性網膜剥離:眼内に形成された増殖膜が網膜を牽引することにより網膜が剥離して起きます。重症の糖尿病網膜症などでみられます。硝子体手術で治します。
  • 滲出性網膜剥離:網膜内あるいは網膜色素上皮側から何らかの原因で滲出液が溢れてきたために網膜が剥離してしまった状態です。ぶどう膜炎や、中心性網脈絡膜症などでみられます。内服や注射、レーザーや硝子体手術などで治します。

 

網膜裂孔・網膜円孔・裂孔原性網膜剥離の治療

網膜裂孔・円孔→レーザーによる網膜光凝固術で網膜剥離への進行が抑えられることもある。

すでに網膜剥離→基本的に手術。網膜剥離は治療せずに放置した場合、失明する可能性の高い病気です。

手術は大きく分けて2つの方法があります。

硝子体手術:(図3)目の中に細い手術器具を入れて手術します。

硝子体というゼリーを切り取り、網膜を引っ張っている力を解除します。目の中に空気を入れて網膜の下にまわった水を抜き、その後レーザーで穴の周りを囲って癒着させます。孔はそのまま残りますが、膨張性のガスを入れて眼球壁に押し付けることで、自力で網膜が元の位置に接着して、穴の周りの癒着により穴が開いていても水が網膜の下に流れ込まないようにします。

手術をすれば治るものではなく、網膜の下液を引かせる・穴の周囲のレーザー斑をしっかり癒着させるために手術後にうつぶせなどの体位制限が必要となります。レーザーは行ってすぐ癒着の効果は出ませんので、きちんと穴に気体が当たるような姿勢をとっていることが必要です。気体は徐々に吸収されなくなります(2週間)。上を向いて寝ると急性の緑内障発作を起こすこともあり、術後の姿勢については医師の指示を守ってください。穴の位置や白内障が強い場合など、同時に白内障の手術を行わないといけないこともあります。

バックリングに比べて患者さんの負担が少なく、合併症も少ないため、現在はこちらが主流です。

川越西眼科では小切開・ワイドビューイングシステムで対応しています。基本的に当日もしくは翌日手術が望ましいです。全身疾患の関係等で当院では手術が困難な場合、連携している医療機関へご紹介します。

図3

バックリング:(図4)目の外から網膜の孔に相当する部分にあて物をあてて(外から眼球壁を押して網膜に近づける)、さらに孔の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って孔の周りの網膜に炎症を起こさせて眼球壁に癒着させる、必要があれば目の外から網膜の下に溜まった水を抜く・空気やガスを目にいれて中から網膜を眼球壁に押し付けるということをします(図5)。眼球を輪状に縛る(眼球に鉢巻を巻くイメージ)こともあります。目の中に気体を入れた場合は手術後にうつぶせなど、穴を上にした姿勢(気体が当たるように)を保つことが必要です。

  川越西眼科でもバックリンを行った方がいます。術式は網膜剥離の状態により選択します。

図4

裂孔原性網膜剥離の予後

初回復位率:95%以上ですが、強度近視の黄斑円孔性の網膜剥離や、発症から時間がたっているもの、糖尿病網膜症などほかの合併症がある方等は再手術の可能性が高くなります。複数回の手術が必要になることもあります(復位とは、網膜が本来の位置に戻っている状態)。

重症例は増殖性硝子体網膜症と呼ばれ、剥離した網膜上もしくは網膜の下にも増殖膜が形成された状態で難治であり、シリコンを入れる・バックリングを行う、と最大限に手を尽くしても、残念ながら失明してしまう場合もあります。

網膜剥離術後の視力:網膜剥離の手術目的は失明を防ぐことで、視力を元通りにすることではありません。

黄斑が剥がれていない場合は比較的いい視力が維持できる可能性があります。しかし黄斑がはがれていた場合は元の視力まで戻るのはむつかしいです。また、暗い・小さい・歪む・色が違って見える、年を取って網膜の萎縮が進むと視力がさらに落ちる、といったことがあり得ます。

その他、数か月から数年たって、網膜前膜(網膜上膜ともいう)という膜が張ってくることがあります。網膜剥離の再発の原因になったり、視力低下を起こして再度その膜をはがす手術が必要になることがあります。

術後も定期検査をしっかり受けましょう。

 

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分院:川越眼科手術とまぶたのクリニック

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